市場調査などについては、欧米、とくに米国では、実務家のためのコンサルタントがいるため、これに依頼することにより、調査期間や費用を縮小できることもあります。
なお、コンサルタントの意見は、意見として聞いても必ずしも鵜のみにせず、最終的には、自らの判断を行うようにすべきです。
なお、事前調査は社内に関連部から成るプロジェクトチームを編成して行うケースが多いといえますが、その際現地事情に詳しい法律・会計事務所をいわばチームの一員として早い段階から組み込み、事前調査にあたっている企業もあります。
のほか、現地の対日感情や気候なども、事業経営に大きな影響を及ぼすので、何回か現地に出張するなどにより、調べておくべきです。
現地調査で一般に利用されている情報収集先としては、日本大使館、JETRO、輸銀の駐在員事務所、日系商社、邦銀、証券会社の支店ないし現法、地場銀行、現地政府の外資導入窓口、法律・会計事務所、業界関係者、日本人会、日本人商工会議所のほか、購買先、納入先、各種調査団の報告書、銀行等のガイド・ブックなどが考えられます。
予備調査の段階で、ラフな数字であっても、事業計画全体をカバーする採算計算のための資料を集め、販売・収支計画をつくってみることにより、本調査の作業にあたって、投下資本の回収期間や、マーケット・シェアなどにつき、思い込みや、考え違いが避けられます。
投下資本の回収期間については、業種や規模、投資目的などにより異なります。
製造業投資の場合、一般に操業後三年で黒字転化、五年で累積損一掃を一応の目安にしている企業が多いようですが、過去の例では、もう少し長い期間が必要となっています。
現在の円高により活況を呈している、韓国、台湾などに進出した日系企業でも、八五年秋以降の円高までは、五年、一〇年と長い期間、低収益に悩まざれていたところも多いといわれています。
なお、社内の役員会等のスクリーンを無事通過きせるために収益性の高い事業計画にするケースをよくみかけますが、あくまでも現実的にかつ余裕をもった計画にすることが大切です。
事前調査によって、実施の見通しが立つと、事業計画の作成に入ることになります。
工場立地をどこにするか。
単独か合弁か。
合弁の場合は、パートナーを誰にするか。
生産品目と生産計画、建設計画、人員計画、使用技術と設備計画、原材料調達計画、販売・収支計画、資金計画、政府の許認可の目途などにつき大枠を固めます。
最後に、計画の経済性評価を行いますが、経済性評価には、通常の財務比率分析や収益見込み分析のほか、デイスカウンテッド・キャッシュ・フロー法があります。
DCF法では、毎期の税引後の利益に減価償却費を加えたものを投下資本の回収源とし、設備の耐用年数の期間において、当該事業から生ずる毎期のキャッシュ・フローを現在価値に割り引いて投下資本の金額と等しくなる割引率・投下資本利回り率を、本計画の資金調達コストと比較し、少なくとも前者の方が高いことが、経済性評価の判断基準となります。
なお、基本となるケースの結果を検討してから、この基本ケースをもとにして、設定条件を一部変更しながら、その結果がどう変わるかを見る方法を、感度分析といいますが、当該事業計画が状況の変化で経済性がどう変わるか、あるいは、どの程度の状況変化まで耐えられるかを調べることができます。
輸銀は、この分析の手法につき独自のシステムを有しておりますので、事業計画立案に際しご利用下さい。
経済性評価を行いながら、前述の事業計画を検討して、現地生産の可否が決定され、具体的な事業計画が仕上がります。
第三は、やや細かな事項になりますが、立地選定にあたって行っているある企業の絞り込みの実例を参考までに紹介します。
同社は米国への進出にあたって、工場設置場所の絞り込みを次のような方法で行ったとのことです。
まず、どの州に進出するかの決定にあたって、ユニタリータックスのある州、労賃の高い州、組合組織率の高い州、原材料・部品供給基地から遠く離れている州などを候補地から除外します。
次に、いくつかの候補地を選び出し、いくつかの経営上の重要事項についてランク付けを行い、総合得点の高い候補地を進出先とした由です。
企業の海外進出の動機・狙いはさまざまです。
従来は相手国の輸入制限と国産化奨励の動きに対応して「自社製品の輸出市場の確保・拡大」を行うために生産拠点を海外に設けるケースが多かったといえます。
早い時期からの開発途上国向け投資はこうした例です。
また近年、貿易摩擦が激しくなる中で米国・欧州で家電・電子機器、自動車等の大型生産投資が急増しています。
従来から代理店、販売拠点を通じて輸出を行っていることで相手国市場について知識はあっても、いざ現地に工場を作ろうとすると迷うことも少なくありません。
広大な単一マーケットとされる米国でさえ、地方・州ごとに事情は異なり、また欧州でもEC域内のどこを選ぶか、むしろ周辺国にするかの選択も必要です。
とくに最近米国へ進出した自動車組立メーカーへの納入を狙った部品メーカーの現地進出は数も多く、その中には初めて海外に出る中堅・中小企業もあります。
米国のビッグ・スリーへの納入では現地の部品メーカーとの競争も激しいと予想されます。
日本におけると同様の効率的な生産、高品質、迅速な納入に近づけるべく、経営戦略を立てる中で、雇用、インフラ等に配慮した立地を考える必要があります。
アジアNICS向け、アセアン諸国向けの投資もこのところ増加しています。
自動車・家電等の現地生産が増加し、部品の現地調達比率が高まる中で、「現地市場の拡大に対応」した海外投資が伸びています。
アジアへの投資は一巡し、飽和状態に陥った感が一時ありましたが、韓国、台湾、タイをはじめとして工業製品の輸出が急速に伸びる中で、経済成長を続け国内マーケットも拡大していることによるものです。
もう一つの特徴は、急速な円高によりわが国における生産がコスト高となり、競争力が低下したのに対応して、「安いコストでの生産拠点」としてNICSなどへの進出が目立つことです。
原材料を輸出し、労賃の安いところでそれを半製品または製品に組立・加工し、日本に引き取るケースが増えています。
ざらに進んで、半製品・製品を現地から対米・対欧に輸出するケースも増加しています。
国際分業型投資とも名づけられます。
同じアジア向け投資であっても望ましい立地環境は異なります。
前述の「現地市場の拡大に対応」したものであれば、投資先国としては一般に高成長で、マーケットが大きいところが望まれます。
一方、「安いコスト」を求め、国際分業を進めようとする場合には、投資先国の経済が低迷していても労賃上昇率が低い方がよく、対米輸出を増やすにはむしろ為替が切り下がる国の方が競争力が出るという側面があります。
シンガポールが初めてマイナス成長のショックを受け、大胆な経済回復策を採り始めた時期に日本向けに製品を輸出している日系企業の経営者はこう言いました。
「実は極めて好調。
賃金は抑えられたし、失業不安から定着率は上がっている。
為替レートも対円で大幅に下がり、コストが大幅に低下した。
金利も低水準でホクホクです」。
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